クジラ論争! (岩波ブックレット)



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不毛な対立の回避のために

 1993年刊行の小著。水産庁の島一雄は、日本主体の捕鯨調査が成果を上げ、持続的利用を試みているのに、反捕鯨派が科学論や異文化理解なしに南極海聖域化を企図したとして批判する。他方、グリーンピースの櫻井淳子は、商業捕鯨が多くの鯨を絶滅の危機に追い込んだこと、海洋管理や生態系の解明には課題が多いこと、公海である南極海で捕鯨をしたがっているのは日本だけで、世界中から有り余るほどの食べ物をかき集めた上、南極海まで行き嗜好品でしかない鯨を捕獲する必要があるのかに疑義を呈する。日本鯨類研究所の長崎福三は、反捕鯨派への反駁のため致死的調査を行ったのに、専門知識のない人が科学的決着後に聖域化案を出すのは非科学的な文化干渉であり、広く平均的にとれない沿岸捕鯨ではなく、南氷洋で効率のよい商業捕鯨をしたいと主張する。最後に小原秀雄は、環境問題、純粋科学、国際政治の側面を総合的に捉える必要を説き、個体性が発達し企業的利用に制限が必要なキー・スピーシーズとしての鯨を魚と分け、生態学的にみる必要等を説き、反捕鯨陣営の問題性を指摘しつつも、日本経済にとって大して重要性をもたない南極海捕鯨を中止し、沿岸捕鯨を要求すべしと主張する。編者は以上を踏まえ、感情論を排し、科学的調査、持続的利用可能性、海洋全体の生態系保持のための制限の順に議論を行い、 それとは別に日本の国際的な立場として、将来に備えてひくべきか、経済的損害自体はどの程度か、南極海に固執するのかを考えるべきで、生態系に問題のない商業捕鯨を認め、文化の相互尊重の上で、新たな環境倫理を構築せよと主張する。本書は両論併記で、しかもそれぞれ2人ずつ紹介しているため、単純な二分法ではない見解の多様性が分かる。不毛な対立の側面だけではなく、生産的な議論ができる部分をいかに拡大していくかが今後の課題であろう。
     



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